藤島大の楕円球にみる夢
(2024/07/01)

ゲスト/大戸裕矢選手(元日本代表/静岡ブルーレヴズ)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。
7月1日放送のゲストは、元日本代表で静岡ブルーレヴズの大戸裕矢選手です。

藤島スポーツライターの藤島大です。ゲストは元日本代表、そしてリーグワン静岡ブルーレヴズの中心選手、大戸裕矢選手です。よろしくお願いします。

大戸よろしくお願いします。

藤島略歴を紹介します。大戸裕矢選手、1990年生まれ。埼玉県熊谷市出身ですね。お父さんの影響を受けて小学5年から熊谷ラグビースクールでラグビーを始める。熊谷東中学、たしか山沢拓也選手と同じですね。あそこはラグビー部あるんですよね。

大戸あります。

藤島やっぱりラグビー部だったんですか。

大戸そうですね。

藤島そこから正智深谷高校に入ります。立命館大学へ進んで2012年、当時のヤマハ発動機、今の静岡ブルーレヴズに加入します。ポジションは一貫してロックと言いたいけれど時々フランカーもしますね。

大戸はい。今年は多かったですね。

藤島元々はロックのイメージが強いんですけどユーティリティのフォワードというのか、何でもできる人です。日本代表5キャップ。サイズ、後で話題になると思いますけど、身長は187cm、体重が104kgとデータにあります。一般の人にしたら、普通のラグビー選手としても十分大きいんですけれども、インターナショナルのレベル、リーグワンのトップの方のレベルだとこのポジションは195、2m、2m5というような人がひしめいてるのでそこでは小さい。なのに日本代表のキャリアがある。この辺を後で聞いていきたいと思います。
最初に最近の話題で、新しい日本代表、エディー・ジョーンズさんが戻ってきて、イングランドとテストマッチがありましたけれども、ご覧になりましたか?

大戸はい、見ました。

藤島どういう印象でしたか?

大戸パワー勝負でイングランドさんは戦ってくるかなって考えていたんですけど、拮抗できていたところもありましたし、特にスクラムに関してはブルーレヴズの1番の茂原隆由選手が出ていて、かなり戦えて互角以上の場面も見られたので、世界レベルにいきなり入っていけたのかなって直感で感じましたね。

藤島クラブの若い後輩が抜擢されて、先輩としても緊張するものですか?

大戸僕もすごい緊張して(笑)、「茂原大丈夫か」って最初思っていたんですけど、やってくれましたね。プレータイムも長くいただいてその中でかなり走れていたし、ボールキャリアもタックルも、特にスクラムも良かったと感じました。

藤島チームの中ではポジションを激しく争っているいいフロントローがいる中で、抜擢されたら結構通用したと。「俺の方が上だ」と思った人もいっぱいいるでしょう、クラブの中には。

大戸良い競争ができれば僕たちもいいかなと思います。

藤島いわゆる「超速ラグビー」というテーマを掲げて最初の20分くらいわーっと攻めましたけど、このテーマはどう考えていますか?

大戸何をもって超速というかまだ僕たちも見えていないところでもあるんですけど、クイックタップに行くタイミングだったり速くセットしてストラクチャーに持っていくところだったり、そういうところの統一感は見ていきたいと思います。試合中でもエディ―さんが「GO! GO! GO!」と言っているのに選手が止まっている場面がクイックタップのところであったと思うんですけど、そういうところのすりあわせで監督とグラウンド上が合ってくればもっと超速ラグビーに向いていくと思います。言葉に力が出てくれば選手も自信を持って戦えると思うので楽しみなワードでありプレースタイルだなと感じます。

藤島ジャパンの話になったのでこのまま続けますけれど大戸裕矢選手もジャパンでキャップを5つ持っている。実際にジャパンのフォワードとして戦って、先ほど言いましたが187cmというサイズで大変でしたか?

大戸ロックって2mぐらいがゴロゴロいるじゃないですか。僕が隣に立っても見上げるぐらいのプレイヤーばかりで大変か大変じゃないかと言ったらすごい大変でした。

藤島静岡にいたフッカーの日野剛志さんが言っていたけど、彼も「ジャパンに呼ばれると190以上のロックがいっぱいいるのでラインアウトでちょっとぶれたなと思っても取ってくれるときがあるんだけど、静岡はピンポイントですから」と。

大戸本当にそうだと思います。

藤島でもデータを見ても、2021年から22年のシーズンでしたかね、大戸選手がラインアウトの成功数が一番だった。大きくないチームとしては大変でしたよね。

大戸分析の時間はかなり費やしましたね。相手の苦手なところとか苦手なタイミングとか、どこが空いてるかとか、僕1人の力じゃなくてそれこそ桑野詠真選手やマリー・ダグラス選手、そういった選手たちでかなり緻密にミーティングを重ねて結果的に僕が取っていたんです。

藤島桑野選手はこの間のマオリ・オールブラックスの試合に呼ばれて、ほぼ同じポジションの後輩、彼はどういう選手ですか?

大戸体を当てるのが大好きな選手と感じます。痛いことを黙々とやるザ・ロックというのが第一にありますね。

藤島先ほど今季はフランカーが多かったと。6番ですかね。何年か前、大戸選手がフランカーをやった試合があって、「違いはどうですか」って聞いたら、フランカーの方は頭を使うって言っていました。「その心は」と聞いたらこう言ってましたね。「フランカーの方が考えてタックルしなきゃいけない、ロックはとにかく目の前に来た人をどんどん倒すタックルをする」と。フランカーの人は絶え間なくタックルするようなイメージがあるんですけど、むやみにタックルしてはいけないんですか?

大戸7番は向かってくる選手に対してバチッといくタイプの選手かなって感じているんですけど、6番は広いスペースの穴を埋めたり相手がこっちに来そうだなっていうアタックに対しても反応すべき人かな、と。体を当てるというより穴を埋めていくような作業が6番は必要かなって感じています。

藤島だからむやみに飛び込んで倒れて、死に体になっちゃいけないんですね。

大戸モセ・トゥイアリイ選手は僕の理想像の6番でした。

藤島ヤマハに在籍していたオールブラックスとクルセイダーズの選手ですね。一緒にプレーした人にすごく尊敬されている選手で、やっぱりこの人は上手でしたか。

大戸上手でしたね。なんでここに立っていられるんだろうというところから僕はモセのビデオを見始めて、モセにも聞くようになったり。そこから自分のビデオ、モセのビデオ、チーム全体のビデオという流れをとりながら勉強し始めて、そこからモセは理想像だなって感じるようになりましたね。ティーチングもコーチングも素晴らしい選手、コーチでした。僕、完全にプライベートの話しちゃってもいいですか?

藤島はい、もちろん。

大戸来週、プライベートでニュージーランドに行くんです。モセに会いに行こうかなと。

藤島何年も前、静岡じゃないクラブの人に聞いたと思うんだけど、日本に来る外国人のリーダーは実はモセなんだ、各チームのみんなが色々なことを相談したり、その家族を含めて、本当に頼りにされてる人だって聞いたことあります。

大戸それはすごい納得できます。

藤島チームの人に「大戸が一番映像を見るんだ、長く見るんだ」って聞いたことありますけど、見てると分かることはあるんですね?

大戸分かるところばかりで、欠かさず見ています。

藤島静岡の関係者が南アフリカ代表の「クワッガ・スミスがすごくよく見るんだ」とも言っていました。

大戸ブルーレヴズから離れているのに一番レヴズの練習を見ていたエピソードとか聞きます。

藤島一緒にプレーしてどうですか?

大戸全試合マン・オブ・ザ・マッチの活躍をしてますね。ジャッカルやアタック面は世界でも有数だと思うんですけど、チームに対しての愛情もすごく感じます。本当に素晴らしいチームマンだなって思います。

藤島フランスのワールドカップでの活躍もすごかったですね。一緒にプレーしていて、どういうところがすごいですか。

大戸行けるって思ったときの判断の早さですね。ボールキャリアとか、表現は分からないですけどハーフブレークみたいなのをする場面があるじゃないですか。そういうとき意外と孤立しやすいんですけどそこを見逃さずジャッカルに行く。この速さは世界で一番なんじゃないですかね。

藤島そういえば大戸選手の経歴で気になるのが立命館大学に入って、新人のときから公式戦に出場して、なぜか大学4年のときにあまり試合に出ていない。このキャリアが気になるんですけれど、何があったんですか。

大戸最初は怪我でメンバーから外れて、そこから1軍、Aチームに戻れなくなる時期が長くなって関西リーグの最終戦まで行ってしまった。自分の実力が届かなかったのが現実です。

藤島そのことは後のキャリアに影響していますか?

大戸1、2、3年と試合に出させてもらって4年生で出られなくて、いつもふわっとやっていたら絶対痛い目見るなと感じたので、ヤマハに入社してからそういうところをなくしていこう、何となくラグビーするのはやめようとしました。

藤島ふわっとするのをやめようってすごい大切な言葉なんですけど、惰性というか何となくそのままの心で歳月を過ごすということですか?

大戸そうです。普通に過ごしていたらそのまま終わってしまっていたと思うんです。1個1個、1年1年しっかり積み上げていくことがラグビー選手として、社会人として成長できるんじゃないかと4年生で出られなかったことで勉強できたと感じています。

藤島つい先日、花園を目指す有力校の3年生が怪我をしてしまって戻れるとしても花園直前。いい選手はこういうときにかえって伸びるんだって励ましたんですけれども、それは本当のことですよね?

大戸おっしゃる通りだと思います。そこが伸びるチャンスでもあると思うので。

藤島リーダーの1人として、クラブの全体のイメージ像を含めて、これから静岡がどうなっていくかをちょっと語ってください。

大戸セットプレーという軸は、絶対にぶれないと思っています。そういった中で去年から活躍した若い選手も、ボールをたくさん動かしてくれると思うので、クイックタップでいく場面も多々、もしかしたら今までのブルーレヴズではありえないような戦い方も増えるかもしれないと思います。ポジティブに考えながら戦っていくようなチームにしたいです。

藤島もう一つ、クラブのあり方として先駆者というか、静岡ブルーレヴズという独立した存在で、私も何度か行きましたけれど、スタジアムの雰囲気が非常に良いんですけれども、選手としてその辺、クラブのあり方をどう考えていますか?

大戸数少ない地方のチームだと思うので、独立もさせていただいて、こういうチームが勝っていったら本当に面白い日本国内になるんじゃないかなって感じています。スタジアムの雰囲気作りとかは事業部の方がすごい力を振り絞ってやってくれていて、あとは僕たちが勝つだけになっていると思うので、順位にしっかりこだわりながら、戦っていきたいなと思います。

藤島今日のゲストは元日本代表、静岡ブルーレヴズの大戸裕矢選手でした。今日はありがとうございます。

大戸ありがとうございました。

7月1日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

6月3日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-240701.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0090286