藤島大の楕円球にみる夢
(2024/12/02)

ゲスト/佐々木剛選手(東芝ブレイブルーパス東京)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。12月2日放送のゲストは、東芝ブレイブルーパス東京のフランカー、佐々木剛選手です。

藤島スポーツライターの藤島大です。ゲストはリーグワン、東芝ブレイブルーパス東京のフランカー、昨シーズンのプレーオフですね、周りの人は実力もみんな知ってたんだけど多くのファンの人が、いやこんないい選手いたのかと驚いた人、佐々木剛選手です。よろしくお願いします。

佐々木よろしくお願いします。

藤島略歴を紹介します。1997年4月17日生まれの27歳、青森県八戸市出身。桔梗野小学校1年のときに父親の影響でラグビーを始めました。お父さん、どこかでラグビーされてたんですか?

佐々木地元の社会人チームでやっていました。

藤島ポジションは?

佐々木ナンバー8です。

藤島血は争えませんね。八戸少年ラグビースクールに入ってプレーを始めました。市川中学、県立の八戸西高を経て大東文化大学に進学。2019年度、4年生のときキャプテンでした。大学2年生のときにU20日本代表、ジュニアジャパンにも選ばれました。2020年、東芝ブレイブルーパスに入団します。
今年の5月、リーグワンの1部プレーオフ準決勝、東京サントリーサンゴリアス戦の後半最初の方でしたよね、逆転の大事なトライをして、「何だこの人は」って私もちょっと思ったんですけれども、ここまですごかったかと思った瞬間でした。決勝戦も後半30分まで激戦、体を張って活躍しました。180センチ101キロ、普通の人にしたら十分立派な体格なんですけど、今は海外の選手も多いので、芝の上に立つとどちらかというと小さく映る、小さなフランカーの枠の人だと私は思ってます。この間、ジャパンの遠征がありましたが観ましたか?

佐々木観ました。

藤島この1年のジャパンのキャンペーンで東芝ブレイブルーパス東京の同世代の選手、原田衛選手や松永拓朗選手が選ばれたりして、刺激になりますか?

佐々木そうですね。特に松永拓朗選手の活躍は同じ社員選手なので身近に感じるというか刺激になりました。

藤島チャンピオンとして迎えるシーズンですけれども、チームの状態はどうですか?

佐々木すごく雰囲気は良くて、開幕に向けて練習の強度、1人ひとりの意識、意図みたいなのはすごく高まってきている状況です。

藤島プレシーズンマッチのメンバーを見ると色々な選手がグラウンドに立っていると思うんですけど、新しい人も力をつけてきている感じですか?

佐々木若手の成長はすごく感じますし、それを見ていて、昨シーズン結構試合に出た選手とかは早く試合に出たいなって話していますね。

藤島ヘッドコーチ、トッド・ブラックアダーさんの方針として、昨シーズンずっと一線だった選手はやや遅めにということですか?

佐々木そうだと思います。

藤島心身の疲れを取るという意味でも、チームが賑やかになって競争が激しくなるという意味でも、鋭い発想かもしれないですね。

佐々木優勝できて、自分の中にもやりきったじゃないですけど一つ達成感みたいなのがあって、若手が活躍するにつれて自分も満足しちゃいけないなみたいな気持ちはどんどん湧き上がってきます。

藤島プレーオフ、本当に好調だったと思うんですけれども、我々が驚いているだけで自分としてあれぐらい当たり前だよって感じですか。

佐々木特に後半とかプレーオフのときはアタックで良いインパクトを与えられたかなと思っています。

藤島一番大事なときに自分の力を発揮できたのはなぜなんですか?

佐々木マインドセットの部分が大きかったかなと思います。プレーオフに入るときに、リッチー(・モウンガ)選手から、一度きりのチャンスをちゃんとつかめるように準備していこう。セミファイナル、準決勝、決勝って考えると決勝の準備みたいになっちゃうから一つ一つがファイナルのつもりでやろうっていう言葉がすごくいい方向に働いたかなと思います。

藤島オールブラックスの名手ですね。背番号10が意見を述べたわけですか。

佐々木ノックアウトステージの勝ち方みたいなのはすごく勉強になりました。

藤島この流れで聞きますけど、リッチー・モウンガ選手は一緒にプレーしていて、何が優れているんですか?

佐々木情報収集能力っていうんですかね、相手の陣形やスペースを頻繁に探していて、人より思考が1個速いというか。去年の今頃加入したときは置いてかれる感覚があったんですけど、一緒にやっていくにつれて、リッチー選手ならこのスペース見えてるからちょっと浅めに立とうとかみんな分かってきたのかなと思います。リッチー選手が入ったことでレベルが1個上がったと感じます。

藤島あの人はどういう人ですか?

佐々木ラグビー中は真摯に取り組む、世界一の選手だなと思うんですけど、オフザフィールドだとみんなと飲みに行くのも好きですね。この前、鹿児島合宿があったときは眞野泰地選手、桑山淳生選手、伊藤鐘平選手、杉山優平選手、リッチー選手でしゃぶしゃぶ食べに行きました。チームに溶け込もうとする、関係性を作ろうという姿勢はすごくあります。

藤島喜んで食べてました?

佐々木帰って来てからもしゃぶしゃぶに行っていましたね。

藤島シャノン・フリゼルという選手がいますよね。同じフランカー。どうですか?

佐々木すごくラグビーが大好きで、積極的にチームを良くしようとしてくれる選手です。

藤島オールブラックス、ものすごいパワーや圧倒的な突進力があるとか、ブレイクダウンをめちゃくちゃするというところもあるでしょうけど、そんなに違いはあるんですか?

佐々木試合のときの破壊力は半端ないですね。正面にぶち当たっても強いと思うんですけど、相手との間合いがあれば少しでもずらして前に出ようというところが勉強になっています。あんなにでかくてもやるんだなと思って、自分もやらないわけにはいかないなと。

藤島リーチマイケル選手、人格的にもユーモアもあるし立派で、本当にこの人は素晴らしいなって思うんですけど、どこが一番尊敬に値するんですか?

佐々木プレーはもちろんすごいですし、練習中も一つでも多くの仕事をしようとする。タックルしたらすぐ起き上がってブレイクダウンに行くし、アタックでもどんどんボールに触って前に出ようとする。仕事量の多さですね。全体練習が終わった後も追加でコンタクト練習をやってたりして、もう毎日自分を良くしようとする姿勢、ストイックさはすごく勉強になります。

藤島佐々木選手はプレーオフで爆発して大活躍をしたんだけど、加入して何年目ぐらいにやれるぞって感じになったんですか?

佐々木2シーズン前ですかね。全試合メンバー登録されて、リザーブが多かったんですけどシーズン通してメンバー争いに絡めたのは自信になりました。スタートのとき、全然自分らしさが出せなくて、「何かびびっている、困ってるように見えるから、もっと自由に、完璧に準備できなくても対応して自分らしさを出す方が大事だよ」って言われたのがきっかけでよくなったのかなと思います。

藤島それはトッド・ブラックアダーさんですか?

佐々木はい。

藤島あの人はどういう人ですか?

佐々木何よりも選手に寄り添ってくれるイメージですね。選手が悩んでそうだったり、問題を抱えていそうなときは声をかけて必要ならミーティングしたり、メンタルをしっかり整えてくれるヘッドコーチだと思います。

藤島ブラックアダーさんはぱっと気づくんですか?

佐々木2シーズン前に声かけてもらって話したときも、一緒に話そうかと言われて、当たってるなって思う節が多かったので、すごいなと思います。

藤島コーチってそういうことですね。すぐ気づかなきゃいけないんですよね。
佐々木選手は180センチ、小さなフランカーって認識があるんですけど、小さい選手だって意識をして練習をする?

佐々木やってますね。パワフルなプレーはもちろんするんですけど、そこだけじゃなくて低いところのプレー、ジャッカルとか、そういうところの仕事量で頑張ろうと日々思っています。

藤島あらためて、八戸に生まれ育って、小学1年生からラグビーを始めて、最初から楽しかったですか?

佐々木大嫌いでした。練習2時間あったんですけど、最初の1時間が体作りというか運動と走り込みがメインだったので、そこがすごく嫌で逃げ回っていました。次の1時間はラグビーボールを使った練習があるので喜んで入ったんですけど。コーチに中学でもやらないかと誘われて、やめるって言ったんですけどすごく説得してくれて、自分も好きなコーチだったので続けます、と。中学校からラグビーが楽しくなってきて、今までやっている感じです。

藤島そのコーチ偉かったですね。その人がいなかったら、この間のブレイブルーパスの優勝はなかったかもしれない。どう励まされたんですか?

佐々木日本代表を目指せると言われて、調子乗りなので、そうかなとか思って続けるって言っちゃいましたね。

藤島そこでなれないよと思わないところがここまで来る人のメンタリティ。準決勝の後、「なんで足速いんですか」みたいな質問が記者から出たとき、「八戸西高のグラウンドが砂だから」って言ってましたね。

佐々木ずっと走りづらい状況で走ってたんで脚力は強化されたのかなと思います。

藤島佐々木選手に会いたい、長く話したいなと思ったのはあの一言だったんですよね。グラウンドが砂だったから足が速くなったんだ。いいコメントですよね。
社員選手だということで、どういう部署でどういう仕事を担当しているんですか?

佐々木鉄道システム部という主に新幹線の中身、カーブのときに曲がる車体を自動で水平に戻すような装置とか、速度制御やマスターコンピュータ、そういうのを作っている部署です。

藤島新幹線好きの理科系の人にとっては夢の職場ですね。私なんか昔から東芝府中の取材をしてきて、あの頃はみんな社員選手で夕方まで仕事して、でもあの激しいラグビーをする。村田亙さんというジャパンのスクラムハーフだった人が言っていたんですけど、彼は日本の中で早くプロになった選手で、東芝府中時代のアマチュアの2時間の練習だけはプロだったって言っていましたね。すごい集中力と激しさで練習していたけど、終わった後みんなで居酒屋に行くところがアマチュアだったって言っていました。でもああいう東芝府中時代からのカルチャー、何て言うかな、逃げない、まっすぐ、本当に力強いプレーをしていく。そういう東芝らしさは残っているんですか?

佐々木そうですね。リーグワンになってから、スローガンじゃないですけど「接点無双」「猛勇狼士」を掲げていますが、OBの方からアイディアや意見を募り、選手からも出たのが、接点の部分の良さで、言葉にしたことでより選手たちの心に残って、それが昨シーズン出せたのかなと思います。だから変わってないんですね。

藤島やっぱりクラブってそういうもんですよね。チームの雰囲気はどうですか?

佐々木リーグワンになってプロ選手も増えてきたんですけど、いい意味で部活みたいな雰囲気があります。和気あいあいとしていて、関係性が濃いというか、そういうところが魅力じゃないかなって思います。引退した方から飲みに誘われることも結構あります。

藤島これから開幕しますが、個人的な目標はありますか。

佐々木全試合、スタートで出ることですね。プレーの内容的にはブレイクダウンのジャッカルの部分は自分の持ち味、強みだと思うので、毎試合出していく。アタックの強みも出していけたらいいなと思っています。

藤島今日のゲスト、リーグワン連覇を目指す東芝ブレイブルーパス東京のフランカー佐々木剛選手でした。ありがとうございます。

佐々木ありがとうございました。

12月2日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

12月2日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-241202.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0100786