藤島大の楕円球にみる夢
(2025/03/03)

ゲスト/鎮勝也氏(スポーツライター)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。3月3日放送のゲストは、スポーツライターの鎮勝也さんです。

藤島スポーツライターの藤島大です。ゲストは関西在住のスポーツライター鎮勝也さんです。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

藤島今日はわざわざ新幹線に乗って東京虎ノ門のスタジオに来ていただきました。テーマは関西の、例えば大学はこれからどうなるのかとか、進行中のリーグワン関西勢とか、そういうことになっていますけど、この人が来たら分かりませんね。
経歴を私の方から紹介します。鎮勝也さん、1966年、大阪府吹田市の出身です。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始めました。大阪府立摂津高校から立命館大学、大学卒業後はデイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理部。整理部は紙面のレイアウトをするところですね。その後取材記者、いわゆる新聞記者を経験します。
記者時代、主に野球とラグビーを担当しました。現在独立してスポーツライターとして専門誌『ラグビーマガジン』、関連の『ラグビーリパブリック』『ラグリパWEST』のあの名物コラムで、昔の表現だと健筆をふるっている。今はキーボードを叩くわけですけれども、私も楽しみに読んでおります。著書多数、『花園が燃えた日』、これ伏見工業と北野高校の本当に花園の歴史を飾る一戦、そこに焦点を絞って物した1冊です。『伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか』、これはプロ野球のね、関西大学出身、阪急ブレーブスの剛速球投手のことを書いた本ですね。それから『ラグビーが好きやねん』、これはベースボールマガジン社から出版されております。
関西のスポーツライターの1日ってどうですか?

歳とともに原稿に集中ができなくなるので直していくのに時間がかかって結構大変ですね。自分が納得したものをやっぱり出したいので。でもわりとそれなりに書けてるなというのがあるので。

藤島なるほど。私、直す時間が一番好きなんですよね。早く直す時間にならないかといつも思って生きている。

今日の原稿を明日いきなりがらっと変えたりするんですよね。

藤島原稿を打って、私は必ず印字するんですけど、それを直して、もう1回打ってまた印字する瞬間が好きなんですよね。

時間かかりますやろ。

藤島でもね、できれば書いた後1日置きたいんですよね。1日置くと本当に良くなる。

おっしゃる通りで、1日経つと寝るでしょう、散歩するでしょう。血が巡ってこれを入れないといけないとか、ここはちょっとないんじゃないかなとか出てくる。

藤島その余裕がないときでもちょっと置きたいですね。外に出て食事するとかできれば映画を観るとか。

僕の場合も昼寝とかするとリフレッシュして、フレッシュな気持ちで原稿に向かえる。

藤島最近、ラグビーどうですか?

一つは同志社大学ですね。監督が永山宜泉さんに代わって非常に期待しています。人望があって、「45年会」という1970年に生まれたラグビーの仲間で集まって、それで世話役みたいなことをやっています。「例えば3のものを5とか6にはできるけど10にはできません」と常々言っていたんですけど、そんなにずっとラグビーの現場にいたわけではない。同志社でやってその後、廃部になったワールドという当時関西ナンバーワンだった時期もあるようなチームに入って、その後大きな和菓子店をやっている実家を継いでその間に同志社のコーチをやったりしていて、ずっとプロコーチみたいな形でやってきたわけではないですが、3を5で十分、10にするのはリーグワンからでいいと思うんですよ。スクラムの姿勢であるとか鍛え方とか心の持ち方をまず教えてもらって、そういう形でやっていくということだと思うんですね。それが今の同志社には欠けているんではないかと。きちっと土台を作っていく。同志社は歴史的に学生が自分たちでラグビーをしていく、平尾誠二さんの頃からそういう流れがある。でも今のご時世、好き勝手やってできるのかと。永山さんが言っていたのは要はフレーム、外枠を作るということから走ったり体を強くするのをやった上で、学生が好きなラグビーをしていったらいいと。非常に理にかなったことであって、ある程度大人が方向性を示してあげる必要があって、あとどういうラグビーをしたいかは、あんたたちで話して考えなさいと。

藤島経歴は確か同志社香里高校から。

そうです。摂南大学を2年ほど教えたのかな。ちょっと余談になるんですが今回ね、摂南大学がすごいなと思うんですよ。なぜかというと、永山さんが教えてスクラムが強くなってきているわけですよね。そのときに同志社が監督として持っていくわけでしょう。普通やったらこれやめてくださいよってなると思うんですよね。けれど送り出したというのは、摂南大学もすごいなって思うんですよね。

藤島自分の話で恐縮ですけどね、都立国立高校のコーチをね、新聞記者を辞めて、本当に無給フルタイムコーチという恐ろしい7年間、無給は5年でしたけどコーチして、本当に国立のラグビー部を愛していて。1人ひとりに手紙を書いていました。でもね、思いがけず早稲田大学の次期監督から早稲田のコーチをやらないかって電話が来た。予想もしてなかったし国立を異様に愛して情熱を注いでいたのでその気にならないって自分で思ってたんですね。

国立高校のOBではないわけでしょ?

藤島そう、でもずっと7年間やっていたから。ところがそのとき、すっと「やります」と言いました。自分でもあの感覚はすごく不思議ですよ。それで僕はまた極端でね、とにかく二つやる人は全部失敗すると思って、学生の前で、大学から誘いが来て私は行くことにしたと言って、それから1回も国立に行ってなかったですよ。早稲田のラグビー部が休みのときも、こんなとき大好きな高校に行っているようじゃ早稲田を勝たせられないと思って。頑なすぎた。

そのときは早稲田を勝たせるためには24時間早稲田のことを考えなきゃいけないと思って。それで正しいと思います。

藤島大学も無報酬です。家からも若干国立が近いぐらい。

母校から声がかかったらそれはそれぐらい嬉しいもんやし、今の話は永山さんにとっては良い話やね。そういうもんなんですよね。

藤島京都産業大学は全国的に最近ファンが増えていると。なんか応援したくなる雰囲気があるじゃないですか。現況はどうですか?

監督の廣瀬佳司さん、GMの元木由記雄さん、あの2人の関係で良くなっているんじゃないかなと思うし、田倉政憲さんがスクラムコーチやっています。

藤島田倉コーチってすごいですね。見返りを求めない、そこにいる人間を教えるのがひたすら好きだ、それは伝わってくる。数年前、京都産業大の右プロップの選手と酒場で話したんですね。タックルを教わりたいと言ったか教えると言われたか忘れたんですけど、とにかくマンツーマンでやると。そうしたら、朝授業の前に早朝5時とかに自宅から車でものすごい時間をかけてグラウンドに来て、出勤前にタックルの台になって手本を示す。部の誰よりもタックルが強かったって言いましたね。1人のある部員のためだけに何時間もかけて車で来て、早朝のグラウンドに行って一対一で教える。

京産は大西健先生の時代、それこそ30年ほど前から早朝練習をやっていて6時ぐらいのスタート。柔道場でやるんですね。鍵を開けてあげないといけないから、大西先生は4時半ぐらいに京都の西の方にある家を出て、車で5時ぐらいに向かう。それを田倉さんも受け継いでいるわけですね。やってもらったことをやっぱり返すじゃないですか。してもらったことを次に伝えていくということで考えていけばあのチームはまだ大西先生のそういう流れというのがあるんですね。

藤島学校スポーツの美徳というか、そこなんですよね。Jリーグが非常に人気で、大学を経ないでほとんどの選手が高校からプロへ行っていた時代があったんですね。そのとき、先日亡くなりましたけど賀川浩さんという最長老サッカー記者の方とたまたまお話して、「あれちょっと心配なんや」って言っているんですね。つまり18歳で高校を出て、プロの世界に行く。プロは競争で誰かが入ったら誰かが首切られるというところです。しかも海外の監督は自分の管理の外で勝手にめちゃくちゃ練習することを好まない。そこに行くとね、例えば大学というのは、何々大学にすごい選手が入ってきたらその大学の、もうおじいさんでも一番すごかった選手が来て、自分の持っているものを何の見返りも求めず全て教えるんだ、と。あの機能というのは、実はものを伝えるときにいいんだ、学校スポーツはそこが強みなんだ、ラグビーに色濃く残って野球にも少し残っているけど、サッカーはなくなりつつあるって心配していましたね。今はサッカーも少し大学に行くようになってきたけれど。

ラグビーは確かにそれは残っていますよね。長田智希くんが早稲田大学のときに優勝していますよね。ボールもらう前に縦に斜めに入ってくる、あれでトライを取った瞬間にOBが湧いて、「誰が教えた」って話になって。あの動きって早稲田は30年40年やっていたわけですけど、誰か教える人がいないとできないわけで、賀川さんの話その通りだと思いますね。

藤島その機能が京都産業大学にある。

だから弱くはならないですね。

藤島天理大学は天理大学で、角度の違うカルチャーがあるじゃないですか。

ありますね。

藤島考えてみたらリーグワンもそのカルチャーを作りつつあったりして、作ったところが強いんですよね。

例えば僕が思うのは、コベルコ神戸スティーラーズってやっぱりスタンドオフなんですよ。強かったときって、スタンドオフがいたんですよ。7連覇のときは藪木宏之さんが明治から入ってきて、連覇する。さらに加藤尋久さん、薬師寺大輔さんとか入ってくる。最終的に平尾誠二さんがスタンドに戻って7連覇まで行く。2003年のトップリーグで勝ったときはアンドリュー・ミラーが、2019年のときはダン・カーター。あのチームはスタンドオフ。ところが今年は李承信を使っていたけど、途中でティモシーを使ったりガットランドになったり。怪我とか色々なことがあってそういう形になっているんでしょうけど、承信で行くんやったら承信で行くべきだと思うし、要はだからスタンドオフを作っていかないといけない。

藤島これは鎮記者とあえて言いますけど、鎮さんのテリトリーにある花園近鉄ライナーズ、ここはどうでしょうか。今はディビジョン2。ライナーズを取り上げるとき、読者が愛しているフレーズがあって、「総合職は150近いグループ会社を束ねる社長になれる資格を持っている」。

今調べたら200くらいに広がっているみたいですよ。そのトップになるには、基本的には総合職で採用されると可能性があるんですよ。だから仕事を頑張ってほしいわけです。駒喜多学部長、GMの前田隆介、この2人も総合職採用なので、この2人が頑張って出世してラグビーを残すために頑張ってもらわないといけないわけですよ。
長田智希くんが偉いのはパナソニックで社員でやっているわけですよ。ああいう男がやっぱりパナソニックの中枢に入っていて、ラグビーを守っていく。プロが今礼賛されているけれども仕事をしながらやっぱり頑張ってほしい。だってラグビーの年間事業費、20億、30億ですよ。それを出しているということは広告宣伝であるとか社員の士気高揚とか、そういうことでやっているわけですから、やっぱりそういうことをかみしめながらやってもらわないと、という思いが。

藤島今日のゲスト、おなじみのスポーツライターの鎮勝也さんでした。ありがとうございます。

ありがとうございました。失礼しました。

3月3日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

3月3日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-250303.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0100786