藤島大の楕円球にみる夢
(2025/07/07)

ゲスト/柳川大樹氏(元リコーブラックラムズ東京)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。7月7日放送のゲストは、元リコーブラックラムズ東京の柳川大樹さんです。

藤島スポーツライターの藤島大です。本日のゲスト、リコーブラックラムズ東京に所属されていた柳川大樹さんです。ロック、それから若いときは結構6番(フランカー)の印象も強い。このほど現役を引退して、今もう社業に励んでいるということで、その辺も聞いていきたいと思います。
プロフィールを私の方からまず紹介します。徳島市出身、徳島県立城東高校、そこからラグビーを始めて3年生のときに花園に出場。徳島県勢として36年ぶりに初戦突破を果たしました。長野・岡谷工業が相手だったと思います。それから大阪体育大学に進学をして、新人の時から試合にどしどし出場して、2年生でU20日本代表候補に選出されました。リコーに入社をして、ブラックラムズに加わったということです。
2011年、7人制のジャパン、日本代表としてアジアセブンズシリーズのメンバーに入ります。優勝も果たしていますね。セブンズワールドシリーズのオーストラリア大会にも出場しています。
2017年、韓国で行われたアジア選手権日本代表に選ばれています。キャップ1ですね。
今年の5月、現役を引退しました。現役のときのサイズ、191センチ、110キロ。こうやって見ると大きいんですけど、俊敏な印象が私にはありますね。では早速話を聞いていきます。よろしくお願いします。
まず、引退について、私ちょっとびっくりしたんです。というのは5月11日、三重ホンダヒートとの試合で、後半早々ですよね、あれ。

柳川そうですね。

藤島負傷者もあってリザーブから出てきてボールを何度も持って活躍をして元気いっぱいで。私なんかも新聞記者上がりなのでベテランの人が最後の方に試合に出てくるとこれで引退かなって昔スクープを狙ったりした癖があって、一応注意してみたんですけど、これだけ活躍したらないと思って、試合後録音機突きつけて話を聞いて『まだまだ頑張ります』と。でもあのときはもう実は。

柳川そうそう、半分ぐらいの気持ちで。

藤島そうですか。私なんか驚いたというかもったいないなとつい思っちゃうんですけども、どうですか、本人としては。

柳川無理やりやろうって言ったら多分できたと思うんです。でも膝とかもあまり良くなかったのでこの辺が潮時かなと。残りの人生の方が長いので区切りを。

藤島チーム関係者に聞くと、非常に後輩に慕われているという証言を得たんですけど、引退にあたってチーム内では?

柳川納会というのをやるんですけど、引退選手にジャージを渡すのが定例で、そのときにプロップの笹川大五選手が自分宛に手紙を書いてきてくれて、それを号泣しながら読んでくれて。

藤島うれしいですね。

柳川うれしかったです。

藤島笹川大五選手、相当慕っていたんじゃないですか、いろいろ証言を集めると。もう私ほど愛している人はいないと(笑)。

柳川そうですね(笑)。

藤島でも号泣っていうのはありそうでないです。これも一生の付き合いですね、これ。

柳川そうですね。かわいい後輩です。

藤島社員選手ですから、仕事はしていたんでしょうけれども、いよいよ本格的に業務に励むと。今はどんな感じなんですか?

柳川昔のトップリーグのときは、結構会社とか行っていたチームが多かったんですよ。今プロ化が進んでいてリーグワンになって、社員選手もどんどん減っているのであまり行けてなかったので、社業に専念するとなってゼロからというか1からやっている感じで。

藤島営業?

柳川はい。

藤島どこかにいわば売りに行くと。

柳川自分は公共事業部に所属していて、担当するお客さんが防衛省です。

藤島こんなの想像で勝手なこと言って失礼だとは思うんですけど仕事できる気がしますね。

柳川自分ですか?

藤島うん。ラインアウトも冷静で。ラインアウト上手でしたよね。相手ボールを邪魔するというか。あれは学習の成果ですか。相手を分析しているとか?

柳川正直自分は全然そういうところはなくて、やっている中で感じるというか癖も読んだりしていて、ラインコールする人、コーラーがさっきここ出して、次はここ出したいだろうなって気持ちを読み取って。

藤島つまりその場で相手の気持ちを読む。

柳川はい。

藤島営業じゃないですか(笑)。例えば、足がこう動くとか、こういう体の動きしたら飛ぶとか、そんな感じなんですか?

柳川そうですね。重心が動いていたり、誰かしら動くんです。動いている奴を見つけて、大体そこが絡んでくると思うのでそこに張っていくみたいな。

藤島なるほど。107試合もリーグだけで戦って、何となく記憶に残る瞬間とか試合とかありますか?

柳川デビュー戦は覚えていますね。

藤島2011年、サニックス戦ですね。秩父宮、6番ですよね。

柳川はい。

藤島緊張があった、それともうれしかった?

柳川うれしかったのはありますね。

藤島そこから始まったわけですね。これだけ長く在籍したブラックラムズはどんなクラブですか?

柳川昔からよく言われているのは勢いづいたら止まらないチーム。昔は波があったんですけど、ここ最近はその波が少なくなってきているからたぶん強くなってきていると思います。

藤島波をなくそうというのはみんな思っていると思うんですけど、段々できるようになる。あるいは、あるときにポンとできるようになるんですか?

柳川あるときにできるというのはないと思います。やっぱりオフフィールドの過ごし方とかで自信がついてくると思うので。

藤島オフフィールドというのは興味深いですけど、例えば自分をちゃんと律してちゃんとアスリートとして生きるというようなことですか?

柳川そうですね。

藤島そうすると、グラウンドに立ったときに自信がある。

柳川はい。動揺しないというか。

藤島なるほど。世界中のコーチがね、最後勝負を分けるのは自信なんだと言いますよ。ないチームはないしあるチームはある。その変化をまさに経験してきた。

柳川そうですね。1人ひとりプロの意識がすごくついてきていると思います。世界のトップ選手が来ているじゃないですか。そこに引っ張られているのがあると思います。そういう人たちはちゃんとしています。

藤島その流れでどうしても聞かなきゃいけないのがスクラムハーフのペレナラ選手の話なんですけど。やっぱり大きいですよね、加入は?

柳川めちゃくちゃでかいです。

藤島どこがすごいですか。

柳川本当に全てすごいというか人としてもやっぱり素晴らしいです。ケチのつけようがないという感じ。

藤島あれだけのキャリアがあっても、チームの中でチームマンですか。

柳川ひたむきにチームのために頑張ってくれているのはこちらもリスペクトです。

藤島埼玉パナソニックワイルドナイツと熊谷で試合したときにトライがキャンセルされました。記者会見で、自分のその二つ前ぐらいのパスがちょっとぶれたからだって言っていて、いいことを言うなと。

柳川人のせいにあまりしないので。自分にベクトルを向けているので。

藤島ジャパンの思い出というか、セブンズと15人制、両方のキャップを持っている人は意外と絞られてくると思うんですけど、15人制の方のジャパン、2017年の仁川でしたね。韓国代表と試合をして勝つんですけど。

柳川自分は代表になることを目標に掲げていたんで、それが叶ったんですけど、緊張しちゃって正直、あまり覚えてないです。

藤島普通に聞けばもっとキャップを取りたかったということになるんでしょうけど、そのあたりはどうですか。

柳川もちろんチャンスがあればって思っていましたけど。

藤島ジャパンにしてもリーグの中でも、どうしても海外から選手が来て、そのことについてはずっと考え続けたんじゃないですか?

柳川そうですね。それでロックをやり始めたというのもありますね。

藤島そうか、フランカーの方がむしろ厳しい。

柳川はい。

藤島昔はロックが一番背の高い人ってイメージですけど、やっぱりリフティングもあったりして。

柳川どこのポジションもあまり変わらなくなってきていると思います。

藤島なるほど。2メートルあるロックだと厄介だなという感じより、動きが良い選手の方が怖いんですね。
ブラックラムズには、どのあたりで声がかかったんですか?

柳川大学3年生のときの菅平合宿かな。そのとき当時のヘッドコーチが試合を見ていたらしくて、そこで目をつけてもらっていたらしいです。

藤島入社して、クラブの門をくぐって、最初、どう思いました? 東京生活を含めて。

柳川2011年入社なんですけど、あのとき(東日本大)震災だったんですよ。

藤島そうかそうか。

柳川3月28日が入寮日なんですけど。けっこう大変でした。

藤島グラウンドの上、最初にどういう感覚でした?

柳川正直そんな驚きはなかったです。もちろん外国人選手のフィジカルとかはすごいという印象がありましたけど。

藤島これはやっていけるぞと。やっぱり心が強い。ロックのイメージが最後は強いですけど、自分はどっちだという感じなんですか?

柳川やるのは3列の方が面白いんですけど、できるできないで言うとロックの方ができていたと思います。あまり痛いのとかきついのは好きじゃないんですけど、ロックってそこをやるところじゃないですか。好きじゃないけどやるにはやるので、やりたいことと、できることが違うかな、と。

藤島昔、誰だったかな、ロックの方がいっぱいタックルするんだって言っていましたね。昔の僕みたいな年代のラグビーファンだとフランカーこそ一番タックルするって思うんだけど、いや今は違うんですよって優しくたしなめられました。6番はむやみにタックルしないようにプレーするんだと。

柳川やっぱりバックスみたいな立ち位置でもあるので。

藤島ロックのプレーヤーとして最も大切なところっていうか、これがロックの核心なんだ、というところは?

柳川ロックは痛いこととかきついことを率先してできる人。性格がすごくあると思いますね。ラグビーって性格がめちゃくちゃ大事だと思うんですよ。

藤島いいこと言いますね。昔、都立国立高校というところのコーチをしていたとき高校2年生の部員に言われたことあります。「大さん、ラグビーは性格のスポーツですね」。確かにそうなんですよね。
ロックはどこがいちばん痛くなるんですか?

柳川首回りとか。スクラム、タックルで当たってもそうですし。

藤島最初に、ラグビーより人生は長いんだとおっしゃっていたけれど、そういう意味で自分の像を描けますか?

柳川全然描けてないですけど頑張っていこうかなっていう感じですね。

藤島満員電車に乗るんですか?

柳川はい。戦っています。

藤島平均的な1日だと例えば朝何時に起きて、何時に電車乗って、何時に帰ってくるような感じですか。

柳川今だと6時過ぎに起きて、7時ぐらいの電車に乗って、9時、5時半で社業しています。

藤島午前中働いてランチを食べる。美味しいでしょう?

柳川好きなもん食えるんで。

藤島そっか。コントロールしなくていいから。

柳川そうですね。無理やり食べていたときもありますし。

藤島先ほどね、まず仕事だと、仕事に慣れてきたら少しラグビーのことを考える。それで分かるんですけど、一応、いずれラグビーに関わりたいという気持ちはありますか?

柳川はい。ラグビーが好きなのでもちろん関わっていきたいです。

藤島なるほど。分かりました。今日のゲストは、元リコーブラックラムズ東京の柳川大樹さんでした。ありがとうございます。

柳川ありがとうございます。

7月7日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

7月7日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-250707.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0100786