藤島大の楕円球にみる夢
(2026/02/02)

ゲスト/三谷悠氏(フリーライター)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。2月2日放送のゲストは、フリーライターの三谷悠さんです。

藤島スポーツライターの藤島大です。今回のゲスト、フリーライターの三谷悠(ゆたか)さんです。三谷さんはこの間のシーズン、明治大学ラグビー部を非常に深く取材をして、いわば優勝の秘話というか背景をよく知っている。先日も『ラグビーマガジン』に非常に行き届いたレポートを書いていました。これ後で言いますけど、実はこの番組の大もとになったラジオNIKKEI、以前はラジオたんぱと言いましたけれども、2000年代の初めに「スポーツジャーナリスト講座」という講座を開講していて私はそこの講師をしていました。実は若き三谷さんはそこに来ていた。これも後でうかがいたいと思います。
私からまずプロフィールを紹介します。1981年、愛媛県の出身。愛媛県立西条高校を卒業していますね。西条高校は藤田元司さん、あの巨人のかつての監督の母校ですね。野球の名門というイメージがあります。明治大学に進んで、いわゆる学生のスポーツ新聞、明大スポーツ新聞に所属をして、「ラグビー担当だったか」とさっき聞いたら、そうではなくてアイスホッケーやボクシングなどを担当していたと。その頃から要するに明治のスポーツを追いかけているわけですね。卒業後、堅い会社に入ったことはないんですか。

三谷ないです。一度も。

藤島ずっと1人で仕事をして、ラグビーはもちろんですけれど野球、サッカーの書籍や雑誌の編集などもしています。プロ野球の公式マッチカードプログラムの編集、それからJリーグのチームの公式サイトの業務なども担当しました。また今、『ラグビーマガジン』や『ラグビーリパブリック』などにも寄稿しています。著書に『アメリカを変えた黒人アスリート偉人伝』があります。そしてあれはもう2023年12月ですね。私の著書のような形になっていますけれども、『事実を集めて「嘘」を書く』という、私が文章論のようなものを語ってそれをずっと聞き書きをして、見事に資料を集めて編集をしてくれた実質上の編著者が三谷さんです。本当恩人のような人ですね。
さっそく聞いていきますけれども、大学選手権の決勝、明治が宿敵早稲田を22対10で破るんですけれども4万人強でしたっけね。あの試合、戦う前は意外と早稲田がいいんじゃないかって雰囲気ありましたよね。

三谷早稲田の方が天理や帝京を倒してきて着実に難しい階段を上がって力をつけてきたみたいな印象がありました。

藤島当日、実はリーグワンの解説をしていて生で観てないんですけれども、その後映像で何度か観ましたけれども、面白いことに早稲田は関東大学対抗戦3位で挑戦者のはずなのに、対抗戦を優勝した明治の方が挑戦者のように早稲田をしっかり研究して、ぴしっとまとまって戦っていた印象です。どうですか?

三谷本当にそうですね。慶應戦で非常に苦しい試合をしたり色々なことがあって、きつい時間を過ごしてミーティングをして、選手同士でも怒鳴り合う、コーチにも意見を言う選手が出てくるみたいな、すごく人間模様のドラマみたいなのがあって、そこから少しずつみんなが自分たちをさらけ出すようになって。藤島さんはよくおっしゃいますけど、ハドルがきゅっときれいに固まっているようなイメージがありますね。帝京戦以降はそんな感じはありました。

藤島確かに慶應戦ですね。終盤、慶應ボールのスクラムになってこれがおそらくラストプレーで。そこから慶應が見事な連続攻撃を仕掛けて敵陣にじわじわ入って、過去に何度かこういう慶應を見たことあるな、あのパターンだと。明治やられるなと思ったら慶應のキャプテンが突然ボールを外に蹴り出して終わらせてしまった。後で本人に確かめたら、4分20秒をしのいだときに興奮状態で勝っているような気持ちになったと。これは尊い発言だなと思ってね。そこだけ切り取ると、愚かなミスに思いますけれど、あれはね、チームが強くなるときのある段階に起こる出来事で、そこでもしキャプテンが蹴り出さなかったら、多分明治やられていた気がするんです。少なくとも反則1回したと思うんですね。ゴール前のモールあるいはプレースキック、完全にその流れでしたね。
勝ったけれどもこれは明治、厳しいシーズンだと思った、まさにあの日に帝京が早稲田を破って、帝京としては、筑波に負けたけれども、ちょっと盛り返したなと。普通帝京というのはああいう反省をもっと後にするんですよね。大学選手権の決勝ぐらいの前にもう1回やり直しましたって強くなるけど、ちょっとやり直すのが早すぎるなと私思った。
対抗戦の明治と帝京の試合前、三谷さんに「今日は面白くなりそうですね」とショートメールを送ったら、「そう思います」と。帝京に勝った後に、選手を取材するスペースで竹之下仁吾選手、15番ですね、日本代表の候補にもなった。彼に止まってもらって、「何があったんですか」って言ったらかくかくしかじか、ミーティングが始まったんだと。萩井選手と白井選手、2年生の桐蔭学園の彼らと伊藤龍之介選手。彼らが全部リードしたと。竹之下選手はこう言ったんですよね。慶應の試合までは、僕らは何でもできちゃうんで何が一番強みかぼんやりしていた、と。学生の力でたどり着いたんですよね、その総括に。どんな感じだったんですか?

三谷帝京戦の準備を始める週が始まって。その週の頭に全体ミーティングがあって、1人の下級生のメンバーの選手が終わりかけのときに「このままで勝てるんですか」「僕が見ていたら無理だと思います」と。コーチ陣にもはっきり言って、それプラス、バックスの選手に対しても、慶應の試合のことですよ、「フォワードがあんなに頑張っているのに、バックスが勝手なプレーをしてボール落として何も思わないのか」ということをはっきり言ったんですね。場がシーンとなって、とあるコーチが諌めて、それが4年生の多くの選手に刺さったんですね。もう本当に変わらなきゃいけない、このままじゃもう対抗戦も選手権も絶対優勝できないと。平キャプテンは4年生として強く言い返したかったけど、もう何も言えなかったと言っていました。

藤島学生のミーティングを仕切ったのが2年生の萩井耀司選手、スタンドオフの控えですかね。ウイングの白井瑛人選手と2人ともいい選手ですけど、彼らがものすごい仕切りをするって竹之下選手は言っていましたね。

三谷彼が言うには、明治は選手としてすごい人が多いんだけどもその分プライドが高くてミスから逃げる傾向があると。

藤島誰が言ったんですか?

三谷白井選手ですね。夏合宿でも言ったらしいんですね。4年生にもっと引っ張って欲しかったので4年生に対してどうなんですか、と。

藤島恐るべき2年生ですね。すごくいい選手。明治はみんないい選手ですねこれは事実ですね。
先に言いますけど伊藤龍之介選手のシーズンでしたね。この間の大学ラグビーは彼がトップでしたね。あと早稲田に負けたとき最後に出てきた帝京のキャプテン大町佳生がすごかったですね。なんで最初から出ないんだと思いましたけどね。決勝戦の伊藤選手と準決勝の大町キャプテンが印象に残りましたね。
雰囲気はどうだったんですか。対抗戦の日本体育大学戦、最後4万人の前で日本一になるチームが精彩を欠く試合をした。あのとき日体大ってインフルエンザで直前にもメンバーが変わってレギュラーほとんどいなくて23人の中に1年生が8人。それなのに、1回5点差まで行くんですよね。後半の最初。試合が終わった後、平キャプテンの記者会見が本当に暗い。あの頃、色々なことがうまくいってなかったんですか?

三谷一番思い悩んでいた時期ぐらいだったと思いますね。平キャプテンが立派だなと思うのは、あれだけ苦しい時期でも、彼自身のパフォーマンスっていうのは落ちなかったんですよね。

藤島選手としてはものすごく優れていますね。ジャパンになって欲しい。外国人に強い。すり足なんですよ。上体はものすごく強いんだけど、下半身は昔の日本の選手みたいな、ちょっと腰が落ちていて止まった状態からぱっと加速したとき、速いんだけど上体に緩みがあるんですね。だから手が自由に使えて、オフロードがめちゃくちゃ上手いでしょう。

三谷そうですね。

藤島早稲田もあれでやられていましたよね。

三谷最初のトライは。

藤島早稲田は対抗戦で帝京、明治に負けたけど、ちょっと言い訳が立つ負けなんですよね。そんな悪くない、結構反省が難しい感じで明治みたいにとことん落ち込まなかったんですね。大学選手権で厳しいブロックに入ってネジを締めたら、天理も帝京も強かったですよね、決勝クラスの試合を続けて乗り越えたので、到達感みたいなものが。準決勝が終わって早稲田の4年生が結構喜んでカメラに応えて、準決勝の後に喜んでいるなって正直思ったんですけど、多分自然な感情だったんですよね。でも決勝で引き締まったままの明治が待っていた。
明治大学の話をたっぷり聞いたんですけどその取材をずっと重ねてきた三谷さん、フリーライターとしてね、他のスポーツももちろん担当することもあります。先ほどちらっと最初に言いましたけれども、この番組のいわばきっかけとなったラジオNIKKEIかつてラジオたんぱという放送局が主催をした「スポーツジャーナリスト講座」。私はその講師の1人でそこに三谷さんも。明治大学を出てまだ若い頃ですよね。

三谷2005年ですかね。

藤島それが出会いですね。その後別の出版社で行ったそういう講座にも来てくれて。

三谷12年後ですね。

藤島その後に先ほど言った私の本を編集したい、そういう本を作りたいと言って連絡をくれてそれが再会のような形でした。
今日私、本を持ってきたんですけど、そこの講座に来ていた1人に篠原美也子さんがいて、そのときすでにプロのシンガーでしたね。『スポーツに恋して 感傷的ウォッチャーの雑食観戦記』、とてもいい本ですね、著書もある。それと大石三知子さんが来ていて、後に映画のシナリオライター脚本家になって、『ゲゲゲの女房』などをやった人です。その大石さんも著書があって『奇跡のプリマ・ドンナ 三浦環の「声」を求めて』。これもいい作品です。あの講座を覚えています?

三谷体験で参加しました。私も作文の寸評をいただいて、大したあれではなかったんですが「才能あります」といただいて、それを頼りにしがみついています。

藤島私はね、ラグビーのコーチをしていたんですけど、大事なことは1対1で言った方がうまくいくことが多いので大変なんですけど1人1人に添削しました。

三谷採点していただいたプリントに時間が印字されていて、午前1時半とかでしたね。そのぐらいの時間までかかっていたんだろうなと感じました。

藤島今、ラグビーを中心に仕事をしている感じですか。

三谷そうなっていますね。一昨年の春ぐらいから色々縁あって、今の編集長の直江さんを紹介していただいて『ラグビーマガジン』で仕事をするようになったり。不思議とこの本を出させていただいて、色々なことがつながるようになって、今この場にいることが非常に不思議な感じがします。

藤島明治に入学して、スポーツ新聞部、たまたま入ったんですか?

三谷でもスポーツを書くという仕事はしたいと思っていたので、学校に行くと勧誘していてこういう部活があるんだと思って入った感じですね。

藤島ファンというのは勝ったら喜ぶ間もなく来年度の心配をする。服部選手も悔しいから伸びるぞ、矢崎選手怖いな、帝京が化けるぞとかそういう話をするんですけど、ウォッチャーとして、次のチームの明治はどうですか。

三谷伊藤龍之介選手に来季のことを聞くと、今年は今年で区切ると。メンバーも同じじゃないので、その年のチームで強いところを見つけて、色々試行錯誤しながら、またいちから作っていくのが大事だと。なぜかというと、彼が國學院栃木で2年生のときに準優勝して、自分が翌年キャプテンになって同じことやろうとしてうまくいかなかった。チームの代の色があるからそこを見つけていかなきゃいけないと。

藤島いいところついていますね。今の話はコーチがやっと気付くようなことを、学生がもう気づいている。
今月のゲスト、知る人ぞ知る、これからもっと知られる明治ウォッチャー、三谷悠さんでした。ありがとうございます。

三谷ありがとうございました。

2月2日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

2月2日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-260202.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0100786