取引量が少ないことで流動性リスクが起こる

流動性リスクとは、金融商品を売ろうと思ったとき、その商品がマーケットでの取引量が少ないこと等により、希望した価格で売りたくても売れない状態を指します。国債や社債といった債券は、基本的に満期まで待てば元本が償還されますので、大きな流動性リスクは生じません。

問題なのは、株式です。株式で起こる流動性リスクは、大きく分けると2つあります。
1つは、もともと人気がなく知名度も低い銘柄であることです。当然ながら、市場に出回っている取引量が少ないために、流動性リスクが起こる可能性があります。もう1つは、その株を発行している企業に大きな問題が発生したときです。例えば、虚偽記載や粉飾決算といった不祥事の発覚で、上場廃止となる可能性が高まったとします。その企業が上場廃止となれば、配当を受け取る権利は保持されますが、市場を通した株の売買ができなくなります。そこで、投資家は我先に株を売るため、売り注文が殺到しますが、買い手がいないため、値がつきにくくなるわけです。
ちなみに、上場廃止が決まった株の銘柄は、各取引所の「整理ポスト」に移されることになります。整理ポストに移されると、およそ1ヵ月後に上場廃止されます。投資家はその間に、取引を終えなければなりません。

流動性リスクが高いことによるデメリット

流動性リスクが高い金融商品を扱う際には、さまざまなデメリットが生じます。
まずは、販売価格が安くなる可能性が高まります。流動性リスクが高い金融商品をすぐにでも現金化したいのであれば、安い価格で売却しなくてはならない可能性が高くなります。買い手がいない状態に陥るため、時価よりも大幅に安い値段になっているのです。
また、現金化するタイミングを決められないのもデメリットです。流動性リスクが高い金融商品は、緊急で現金が必要になって持ち株を現金化したい状況でも、現金化するタイミングを決められない事態に陥ります。売りたいときに売れないので、金融商品のまま保有することになってしまうのです。

流動性リスクを避けるために

流動性リスクを避けるための方法としては、まずは信頼性のある銘柄を選ぶことが挙げられます。例えば、新興市場の銘柄ではなく、流動性のある東証一部(現プライム市場)の銘柄を選ぶことで、リスクを回避しやすくなります。さらに、知名度の高い大企業は一般的に流動性は高くなります。
ただし、流動性リスクは突発的に起こる可能性があります。企業の不祥事などで金融市場が急変した場合に、取引量が激減することがあります。いち早く売り抜けることを狙うのもいいですが、急がず慌てず静観する選択肢も考えておきましょう。金融危機が去ったときに、流動性が高まる可能性があるからです。

流動性リスクを考慮した資産運用を

流動性リスクを事前に避けるのは難しいケースもありますが、想定しておくことが大切です。
たとえ魅力的な条件の金融商品であっても、流動性リスクが潜んでいる可能性があります。金融商品を保有するときには、流動性リスクも考慮しましょう。

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