弊行に対する行政処分について(3/3)


(別紙)

「優越的地位の濫用」該当性の判定方法(概要)

 

1.「優越的地位の濫用」の成立要件

(1)独占禁止法上、「優越的地位の濫用」(同法2条9項5号、一般指定14項)が成立するためには、

 

 地位要件

一方当事者が他方当事者に対して「優越的地位」にあること

 濫用要件

優越的地位を利用して、不当に相手方に不利益を課すこと(具体的には一般指定14項1〜5号の行為をすること)

 公正競争阻害要件

正常な商慣習に照らして不当に行われていること

 

の三要件を充足する必要がある。これらのいずれかが欠ければ、「優越的地位の濫用」には該当しない。

 

(2)「地位要件」を充足する場合とは、端的に言えば、「取引上の依存性があること」である。

 本件においては、「三井住友銀行からの融資に代えて、三井住友銀行以外の金融機関からの融資によって資金手当てをすることが困難といえるか」という点が、「地位要件」充足性の判断基準となる。

 この「他の金融機関からの調達可能性」を判断するには、当該顧客と三井住友銀行との取引状況、他の金融機関との取引状況、当該顧客の業績、財務状況等が具体的な判断材料となる。

 

(3)「濫用要件」を充足する場合とは、端的に言えば、「強い立場(=優越的地位)を利用して、相手方に不利益を強要したこと」である。

 本件においては、顧客が三井住友銀行から融資を受けざるを得ない状況を利用して、「金利スワップを購入することが融資の条件だ」、「金利スワップを購入しなければ融資に関して不利な取扱いをする」などと「明示」又は「示唆」して金利スワップの購入を強要したと認められるかという点が、「濫用要件」充足性の判断基準となる。

 このような「明示」、「示唆」の有無を判断するためには、金利スワップの契約経緯、顧客との折衝回数、折衝への上司帯同の有無、顧客にとっての金利スワップの有用性等が判断材料となる。

 

(4)「公正競争阻害要件」を充足する場合とは、「自主的な判断による取引が行われないことにより、自由かつ公正な競争が侵害されていること」であるが、通常は、「地位要件」と「濫用要件」の充足性が認められれば、本要件も充足しているものと考えられる。

 

2.本件調査における具体的判定方法

(1)本件調査における判定に際しては、案件毎に、「地位要件」と「濫用要件」充足性につき判断した。

 もっとも、「地位要件」を充足しない限り「優越的地位」の「濫用」はあり得ないことや、「地位要件」の判断は、取引状況、業績、財務状況等客観的な資料で相当程度判断し得ることなどより、まず「地位要件」充足性につき精査した。

 ただし、「地位要件」充足可能性の有無が最終判定結果を左右する重要な分岐点となり得ることから、「地位要件」充足性の判断は幅広に行い、充足可能性が否定し得ない案件については、次の(2)の段階に進めた。

 

(2)「地位要件」を充足するか、充足する可能性が認められた場合には、次いで「濫用要件」充足性について精査した。

 

(3)「地位要件」の充足(可能)性が認められ、かつ「濫用要件」の充足(可能)性も認められた場合には、「優越的地位の濫用事案」ないし「優越的地位の濫用懸念事案」と判定した。

また、「地位要件」の充足可能性がないと認められた案件についても、念のため金利スワップの成約経緯について検討し、説明義務違反など法令上の問題がある可能性が認められた場合には、「その他法的責任懸念事案」(要継続調査事案)と分類した。

 

(4)以上のフローで、すべての案件について二人の弁護士がそれぞれ判定し、結論が分かれた際には、弁護士同士で議論の上、最終評価を決定した。

 なお、判定に際して、資料不足等が認められた場合には、その都度、三井住友銀行(独禁法モニタリング室)に対して追加調査等の指示を行い、追加調査を踏まえた上で判断した。

 

以 上



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