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弊行に対する行政処分について(2/3)
平成18年4月27日
株式会社三井住友銀行
特別調査委員会
金利スワップ販売に係る優越的地位の濫用についての調査報告書
1.本報告書について
株式会社三井住友銀行(以下「弊行」といいます)は、平成17年12月2日、公正取引委員会より、法人顧客向けの金利スワップの販売方法について、独占禁止法第19条に定める不公正な取引方法の一類型である「優越的地位の濫用」に該当する行為が認められたとして、同法第48条第1項に基づく勧告を受けました。
斯かる事態を踏まえ、弊行では、公正取引委員会より指摘を受けた事案と同種の事案の有無について、及び、斯かる事態を招いた原因について、調査を行うべく、平成17年12月14日に特別調査委員会(以下「本委員会」といいます)を設置いたしました。本報告書は、本委員会が主体として実施した調査結果の概要を取り纏めたものであります。
2.本委員会並びに本委員会による調査の概要
(1)本委員会の概要
本委員会は、弊行のコンプライアンス担当役員を委員長とし、内部委員3名、社外委員1名(弁護士)の計5名により構成されております。また、本委員会傘下に、社外委員1名を含む弁護士6名、及び、弊行調査スタッフ(営業部門から独立した独占禁止法モニタリング室所属)で構成される調査部会を設置いたしました。なお、弁護士6名はいずれも弊行と顧問契約はございません。
(2)調査対象
本委員会による今回の調査の対象は、以下の2項目です。
@個別事案調査(平成13年4月以降、弊行が締結した金利スワップ契約全件に関して、「優越的地位の濫用」に該当する行為の有無の判定)
A今回の事態を招いた弊行の態勢面における原因
(3)個別事案の調査方法
@まず、平成13年4月以降の弊行の金利スワップ契約先、全18,162社(解約先を含みます)のうち、別途、架電等により調査要請等をいただいたお客さま等を除く、全てのお客さまに調査票を出状いたしました。調査票の内容は、金利スワップの勧誘・販売時における、当行による優越的地位の濫用に関して、お客さまのご認識をお尋ねするもので、「問題あり」とご認識されるお客さまに、その旨のご返信をお願いしたものです。
A上記の調査票に対してご返信をいただいたお客さま、及び、別途、架電等により調査要請等をいただいたお客さま、合計2,200社を対象に詳細な調査を実施いたしました。具体的には、)弁護士と打合せのうえ設定した項目・内容に基づき、調査部会の調査スタッフが、販売担当者等、関係者ヒアリングや関係資料の検証等を実施。)調査部会の弁護士が、調査スタッフ作成の資料に基づき、「優越的地位の濫用」の事態の有無について第一次判定を実施。)本委員会が調査部会より第一次判定結果の付議を受け、最終判定を実施、というプロセスを経ております。
(4)弊行の態勢面に関する調査方法
今回の事態を招いた弊行の態勢面に関しましては、本委員会において、関係する本部各部より関連資料の提出を求めるとともに、関係する弊行役員、本部部長等に対するヒアリングを実施し、今回の事態に係る原因を究明いたしました。
3.調査結果@ ―個別事案に関する判定結果―
(1)今回の調査におきましては、平成13年4月以降の弊行の金利スワップ契約先、全18,162社のうち、2,200社(上記調査票にご返信をいただいた1,523社、及び、架電等により調査要請等をいただいた677社)について、詳細な調査を実施し、優越的地位の濫用の有無に関する判定を実施いたしました。
(2)本委員会による判定の結果は、以下のとおりとなりました(※)。
優越的地位の濫用事案 17社
優越的地位の濫用懸念事案 51社
(合計) 68社
(※)各事案の定義は、以下のとおりです。
優越的地位の濫用事案
訴訟となった場合、かなりの確度で優越的地位の濫用が認定されると
思われる事案
優越的地位の濫用懸念事案
優越的地位の濫用の懸念があり、訴訟となれば、優越的地位の濫用と
認定される懸念のある事案
なお、優越的地位の濫用(含む懸念)は認められませんでしたが、その他法的責任懸念のある事案(説明不足等の法的責任の発生が懸念されるため、継続調査が必要な事案)を極力幅広に分類いたしましたところ、181社ございました。
(3)弊行では、金利スワップの販売は、複数の部門で実施しておりますが、今回、問題が認められましたのは、何れも、主に中小企業との取引窓口である法人営業部でありました。
4.調査結果A ―弊行の態勢面に関する調査―
(1)本委員会における調査の結果、法人営業部による金利スワップの販売態勢について、以下の問題がございました。
@弊行法人部門における収益目標につきましては、まず、本部の統括部署と各法人営業部が協議のうえ、策定しておりますが、統括部署では、収益目標策定の前提となる各法人営業部の前年度実績について、実績の中身や収益獲得に至るプロセスを十分に検証できていない面があり、前年度実績をもとに収益目標が機械的に設定される傾向がございました。また、一部の法人営業部では、マーケットの特性等が十分には勘案されておらず、高めの収益目標が設定される事態がございました。その結果、企業の貸金需要が低迷する状況下、中小企業を主な顧客基盤とする法人営業部を中心に、時価会計上、取組時点で収益が一括計上される金利スワップの取組が数多く推進される中で、一部に、行き過ぎた営業活動が見受けられ、優越的地位の濫用に該当する行為が発生することとなりました。
A統括部署による各法人営業部の指導は、業務推進、及び、進捗状況管理が中心となっており、期末月に収益が増加する傾向にあることを認識しながらも、実績の中身や業務推進の細かな検証が十分には行われておりませんでした。また、法人営業部の評価におきましても、当該年度の収益目標達成度が、営業基盤作り等の中長期的な目標達成度と比べ、相対的に高い評価ウェイトとなる傾向にあったことも、要因の一つと考えられます。
B一方、弊行では、金利スワップ販売に関して、コンプライアンスを踏まえて販売ルールを策定しておりましたが、同ルールにおいては、金利スワップがデリバティブ商品であることから、その仕組等に関する説明要領等が中心で、お客さまの取引地位(業況、業容等)に配慮した注意喚起や抑制的なルールについて、十分には検討されておらず、優越的地位の濫用に該当する行為を未然に防止するには至りませんでした。
C更に、コンプライアンスに関しては、優越的地位の濫用に関する規程を設けてはおりましたが、公正取引委員会の勧告書において指摘されたように、お客さまによっては上司を帯同しての重ねての勧誘が「示唆」に該当するといったことまでは規定できておらず、「示唆」に該当する行為を有効に抑止するに至りませんでした。また、弊行では、各部門の自律的な法令遵守を前提にしつつ、コンプライアンスの担当部署が法的サポートを担う体制としておりますが、各営業店のコンプライアンス・オフィサーが営業ラインから完全には独立していないことや、 業務計画、及び、業務推進に関し、コンプライアンス面の検討・施策が不足しておりましたことなども、今回の事態を未然防止できなかった要因の一つと考えられます。
Dまた、金利スワップ販売のモニタリングについても、苦情対応については、個別の案件対応に偏り、商品自体を見直し、改善する機能が不十分であったほか、法人のお客さま向けのCSアンケートの分析が不十分であるなどの問題が認められました。
E金利スワップに係る法人営業部宛監査において、独占禁止法遵守の観点から実際の販売状況を掘り下げて検証する監査は行われておりませんでした。また、本部宛の監査におきましても、監査項目に優越的地位の濫用防止の観点が含まれておらず、監査機能が不十分であったと認められました。
F金融庁の事務ガイドライン改訂や公正取引委員会の「金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書」等に対しても、関係各部がそれぞれの所管事項につき、個別に対応策を講じておりましたが、販売態勢全般に亘っての見直し等、踏み込んだ対応策までは講じておりませんでした。
(2)以上、今回の事態を総括いたしますと、上記のとおり、金利スワップの販売態勢
に関して、本部、及び、法人営業部に各々問題点が認められており、これらが重なり、今回の事態を招いたものであります。換言すれば、収益目標を掲げ、これを推進する一方で、それに見合った業務管理や牽制機能が十分ではなかったものであります。
(3)なお、弊行では、従前より、「お客さま本位」を経営理念に掲げ、これをコンプライアンス・マニュアルにも記載しておりますが、今回、斯かる事態を招いたことに鑑みますと、今回の事態の背景には、金利スワップの推進に携わった本部スタッフや法人営業部の担当者において、「お客さま本位」という意識の徹底さを欠いた面があるものと考えられます。
以 上